849 雪王
日本にも狼が居る。それは、人間化には中々見ることが出来ない。その名は雪狼といって、北海道から東北、北陸にかけて生息する。冬に出没して、春になると姿を消す。その中のボスが雪王だ。
本来、雪狼は、日本の自然と生活を守るために存在する雪の精だった。初冬から、雪の精が集まって、成長を始め子供を作る。そして、降ってくる雪を吸収して蓄え、雪崩を防ぎ、春になると、自らの雪を水に変えて、麓に少しずつ流すことで、村の生活水や田畑の水を供給してきた。それを司るのが雪王だった。
雪狼は、山だけでなく麓の町にも潜み、吹雪から家屋を守ったり、子ども達の遊び相手になってきた。
ところが、近年は、人間が引き起こした温暖化で、身体が溶けやすくなったり、雪王のコントロールが効かず、日本のあちこちで、どか雪になったり、吹雪が起きたりして、雪の災害が起き始めた。雪の神が言う。「何とかこれらの災害を食い止めてくれないか。人間が雪を嫌いになってしまう」。
雪王は言う。「それは、我々の力ではどうしょうもありません。我々自身の身体が、大気汚染に汚され、脆くなり、力が減退しているのです。人間が行くところまで行って、その過ちを改めなければ、この災害は続くでしょう」
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