賃上げの春
2018/04/19
安倍首相の音頭で、現政権の成果を国民が感受するためにも、賃上げして欲しいと経済界に要請したために、賃上げのムードは整ってきた。
その手段として、超低金利政策により、円安を誘導し、多くの労働者を雇用している自動車や電機などの輸出型企業は恩恵を甘受し、増益によって賃上げ資金を得ることが出来た。
しかし、多くの中小企業は、何も変わっていない。
社員の給料を上げていくには、それの原資として利益を上げていくしかない。
昔は、新入社員と定年退職する社員のバランスが取れており、昇給していっても、それほどの負担にならなかった。
しかし、今はその構成が崩れ、人不足で初任給が高騰し、定年延長で高給の社員の割合が増え、毎年給与額が増加する。
そうなると、毎年その分の増益を続けないと、いつかは赤字転落となる。
ところが、輸出企業の様に円安の恩恵でもない限り、まだまだ値上げを毎年できるような国内の販売環境ではない。
しかし、人手不足は深刻だ。
特に地方の製造業は、人口減少の連鎖の中にある。
若者が都会に出て行き、結婚する人が減る中で、子供が減り、やがて働き手が減る。その流れは加速度的に早くなる。
人手を確保する、また、少しでも優秀な人材を確保維持するためには、賃上げは不可欠。
利益が確保できなくても賃上げしないと稼働できない。
解決する方法は難しいが、無いわけではない。
我が社では、まず、人手不足を想定して、機械化を進めている。毎年給与は3%程度は上げていかねばならない。その為には、それに相当する労務費削減が必要だが、今までは短期間使用するラインの機械化は割に合わないと積極的に勧めなかったが、今後を想定すると、遅れれば会社自体が成り立たなくなる。幸いに、現代はロボットやICなどが進み、人の代わりをしてくれるし、コストも随分低くなった。
次は、当たり前のことだが、社内外の知恵を絞って、効率化とコスト削減を進めること。本気でやれば、埃と一緒で、無駄も見つかるし、合理化できる箇所も残っている。
3つ目は、商品の選択と開発。
自主開発して、独自の商品を作れば、確実に利益は取れる、地道に積み上げれば、利益が出ていないものを排除して利益が出るものを作れば、極端な話、半分の量でも同じ年間利益が生み出せる。
同時に、そういうものができるようになると、既存商品の価格交渉も有利になる。
簡単なことではないが、それをやらないと、ずっと同じ体質のまま、悩み続けることになる。
病人が、手術が怖いからと、病気を抱えたまま、悪化していくようなものだ。
とにかく、人手確保と言うより、自分の会社の社員の給与が、周りの会社より高いことは経営者の誇りでもあるし、みんなが、安心して頑張ることは会社の発展に直結すること。
いい連鎖を作り出す事が出来れば、更なる可能性を生み出す。