鶴の一声

靏繁樹が日々考えたことや思いついたことを徒然とかきます

*

幸福感

   

 幸せの中にいると、幸せに気付かない。
ずっと冷暖房の部屋に居れば、外の暑さ寒さはわからない。
同じように、生まれて、ずっと幸せの中にいると、幸せが分からない。

 戦前の世代は、全ての国民が、戦争と言う大惨事を経験した。その中で、身内や友人知人を失い、自らも傷ついて苦しんだり、家を焼失したり、大変な悲しみや苦労を経験した。
災難・不幸、または悲惨・地獄と言う言葉を、実際に味わってきた。
 戦後数年の子供たちも、親の苦労を見て、自分たちも汗を流して親の仕事を手伝ったり、食べることもまだ十分でなく、ひもじい思いをしてきた。
 戦争で、夫や親を亡くして厳しい生活を強いられた人も多かったはずだ。

 今の標準的な家庭で、例えば子供がまだ成人前の家庭だと、両親も、まだ40歳代になるはずだが、その年代は、戦後40年以上経って生まれた世代。
 彼らが、物心ついた頃には、日本は完全に復興を遂げ、急成長期から安定期に入り、本人に障害があって働けないか、働けても怠けない限り、衣食住にも困らず、戦争の心配もない、欲しいものは金さえあれば手に入る、そういう時代。
 だから、苦しい、不幸な経験をしていない。経験した人は幸いだ。

 私は、仕事などで、年に何度か、中国や東南アジアに出掛けるが、日本人が世界は平和だと思っているこの時代にも、まだまだ、衣食住に困っている人々は多い。
 例えるなら、家の表側は立派で、裕福そうだが、裏の方は、朽ちていてゴミだらけというようなもので、富裕層と貧困層の格差が想像以上に大きい。

 日本と言う国は、他に類を見ないほど素晴らしい国だ。
どこの国も、言ったように裕福な人がいる反面、地域や人種などにより、仕事がなかったり、他の地域に行けなかったり、読み書きが出来ない人たちが必ず存在する。
 中心街には、日本以上に立派なビルが立ち並んでいるのに、一歩市街地を出ると、バラックが立ち並ぶ。水上で暮らす人々もいる。

 しかし、日本は、日本国中、年数が経った家はあっても、雨風を防げないような家も無いし、みんな義務教育で識字率100%だ。特別に自分だけと言う金持ちも少なく、日本独特の道徳観で、大会社の社長でも社員の給料に配慮して報酬を取っていた。
 残念ながら、近年は欧米型の資本主義や、利己主義的な面が強くなって、私財を肥やす経営者も多くなってきたし、若い経営者の道徳観も変わって来たのは確かだ。
 苦労してきた経営者は、持てる者は、持てないものを助けるという理念があったものだ。
もちろん、お金や物の有る無しで、幸福度が測れるものではない。健康や家族、気持ちの持ち方が勝る場合もある。 あなたが居れば、それだけで幸せという人もいるだろう(笑)

 とにかく、日本の50歳代以下の大多数の人は、幸いなことに、そういう貧しさや苦労を知らずに育ってきたので、自分が、この国で暮らしていることの幸せを分からない。
 傷ついたことも、傷つけられたこともない。
だから、簡単に人を傷つけるし、人を思いやれない、人を愛せない。

 今は、かろうじて、戦中戦後を経験した、物の無かった時代を生きて、田畑を開墾し、商売を立ち上げて、4人5人という子供たちを育て上げてきた人々が存在している。
 そしてまだ、その人達から育てられた人達がいるが、やがては完全な平和平穏平凡の世界に生まれ育った人だけの時代となる。
 わが国のように、平和で、衣食住や教育に恵まれた環境が、どれだけ幸福であるかが、益々分からなくなるだろう。
 ただ、そんな平和は続かないことは、世界の歴史が物語っている。
天気のいい時に、嵐の準備はしておくべきなのだが。。。。。

 - 信念, 社会

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