米俵百俵
今、日本では、役所に入ったら、みんなが目指していた、公務員の憧れであるはずの官僚が、悪者になっている。
官僚というと、よくキャリアと呼ばれ、一般的に、有名大学を出て、国家公務員試験に合格した公務員の中で、課長以上の地位。今、よく出てくるのは、その中でも、高級官僚と呼ばれる局長や次官と言われる人で、森友やセクハラも、いずれも次官クラス。
このクラスになると、ちゃんと天下り先が保証されているほど、偉い人達なのだ。
一般の公務員は、取り敢えず審議官まではなりたいと思うらしい。
官僚の仕事は、各省の予算案作成や法案作成、その他、人事や国会対策資料の作成など。
かなり前に、「官僚の夏」という映画があり、霞が関で国会議員を相手に、国の為に頑張っている官僚の内側を描いたものだったが、今回は、森友学園や何とか獣医学部の問題、セクハラ問題などで、国民からの見方が地に落ちた感じだ。
そんな中で、今日の新聞の片隅に乗っていた、江戸時代末期の官僚の話。
戊辰戦争で敗れ、窮乏を極めた越後の長岡藩。藩士がかゆも満足に食べれない窮状を見かねた隣の三根山藩が、米百俵を贈った。
もちろん藩士も喜び、当時当藩の参事に、さっそく藩士に配ろうと詰め寄るが、参事という当時の藩の官僚であった小林虎三郎は、藩士の非難を浴びても、将来の人づくりのための「国漢学校」の校舎建築資金として活用することを決めた。この、人づくり優先という精神が、長岡藩教育の礎となり、山本五十六元帥などの逸材を出す事になった。
その時の虎三郎の言葉が「今、ここで食ってしまえば、ただの百俵だが、後年にこの百俵が1万俵となるか、百万俵となるか計り知れないものがある」
このことを書いた戯曲があったそうだが、戦時中に、人を大切にするという考えが、当時の軍国主義に合わず絶版となったとのこと。
上に胡麻をする、特別に配慮する「忖度」という言葉が流行語になった。
働き方改革法案・カジノ法案・TPP法案などなど、誰かは得するだろうが、深刻な副作用が心配される法案が、自民党絶対多数の中、短時間で、次々と決まっていく。
とにかく目の前の餌は、早いもの勝ちで、食ってしまえという今の官僚に、虎三郎の言葉を聞かせたいものだ。
いやいや、いまでも、目の前のことだけに捕らわれず、日本の将来や将来の子供たちのことを考えて、上司に立ち向かったり、正義を通そうと頑張っている官僚も、どこかにいる筈だ。