鶴の一声

靏繁樹が日々考えたことや思いついたことを徒然とかきます

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無い職より内職

   

 会社に行かずに、一般に家庭の中でする仕事を内職という。
会社が、家庭に材料などを配布して、作業をしてもらい、それを回収して、その出来高によって作業賃を支払うと言うのが一般的な内職。
 主に、ギフト箱などの箱作りや、衣服などの補正や仕立て、提灯や仏具などの小物作りなどと多岐にわたっている。
 内職のいいところは、高齢で通勤は出来ない、または子供が小さくてまだ仕事に行けない人でも、家の中で空いた時間に仕事が出来る。
 特に、高齢者は、自分の出来る範囲で作業が出来て、自分で使える小遣いが出来る上に、健康やボケ防止にも役立つ。しいては、医療費削減にも繋がる。

 企業は、余剰な人を雇用しないでも、各家庭で多くの人に作業をしてもらうことで、季節性のある作業や、短期集中の仕事を間に合わせることができる。
 まさに、働き方改革の見本のようなもの。
ただし、時間を束縛されないし、作業時間も少ないので、収入は会社勤めとは比較になれないほど少ないが、それでも平均で月に3万円前後。
 仕事の内容によるが、作業を熟す人は10万円稼ぐ人もいると聞く。

 昨日は、福岡地方労働審議会の家内労働部会審議委員として、経営者側代表として会議に出席した。就任してもう7年目になり、最古参になってしまった。
 経営者側表、労働者側代表、そして公正な立場の委員、それぞれ3名づつ。それに県の労働部長などの県職が加わっての諮問会議。
 経営者側は、私が事業者代表で、その他に経営者協会の県代表。労働者側は全労連などの労働者団体の代表。公正な立場として大学教授や労務士。
 今回は、婦人服の作業賃金の改定を行うかどうかについての会議だった。

 現在、人手不足が顕著になり、最低賃金以上に実質賃金は高くなっているのが実情。だから、内職の最低賃金も上げようと言う意見もあるが、婦人服作業の場合、通勤する会社勤めの賃金と同一に考えられない事情がある。
 今、日本の衣料販売は、ユニクロなどの海外縫製品の輸入物販売で、デフレ状態にあり、デパートなどで売られる高級路線も不振を極め、下手に作業賃を切り上げてコストアップすると、仕事自体が無くなり、高齢者の働く場を取り上げてしまうことにもなりかねない。
 また、内職賃金も、安ければ引き受ける人もいなくなり、世間の給与水準に合わせて、自然と引き上げられることになるだろう。

 しかも、福岡県の場合、九州の他県に比べ、前回の改定により4割前後も高くなっている現実があり、今回は据え置いた方が総合的にいいだろうという意見で纏まった。
 もちろん、この会議は、労使両者の意見を聞き取り、県に諮問するだけであって、決定する機関ではない。
 ただ、こういうところまで、最低賃金の規定が行き届いていることは、あまり知られておらず、日本ならではの行き届いた行政ではないかと思う。

 政府は、景気を良くしようと、政治主導で賃上げを誘導しているが、既に中国や東南アジアに対して、すでに賃金コスト面では大きく差がついており、行き過ぎて間違えば、国内生産業を潰しかねない。
 そうなれば、本末転倒、元も子もない。
 

 - 政治経済, 社会, 経営

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