季節商品
今日から、みかんの缶詰製造が始まる。
元々は、わが社で最大の生産品目で、平成の初め頃までは、売り上げの半分近くを占めていた。
今は、多品目生産に舵を取り、製造品目も数倍増えて、フルーツゼリーなど近年に始めた商品も伸びたために、全体の2割程度の比率になったが、それでも原料で2500トンほどの処理量となり、季節ものとしては最大だ。1日に約35~40トンを処理する。
みかん缶詰は、わが国では昭和の初期に作られるようになり、戦後のみかん栽培の進展とともに発展した。
昭和40年代後半には、全国で最高の1000万箱(市販されている缶詰48個詰め換算)が生産され、そのうち半数以上は輸出されていた。
47年に、為替の変動相場移行により、急激に円高になったことで、輸出先が韓国やスペインに奪われ、ほとんど無くなり、やがては商社主導で技術供与された中国の大量の安価な缶詰に、日本の市場さえも奪われる事態になった。
当時の最高生産時に、全国で250社を数えたみかん缶詰を製造する会社も、相次ぐ倒産や転業で、現在はわずか10社となった。
生産数量も100万箱を大きく割り込み、大半は九州で作られている。
みかんの缶詰は、まずみかんの外皮を機械で搾り取るように除去し、中身を水圧で袋毎に割る。
そのあと、酸とアルカリを利用して、袋の皮を除去、洗浄し選別、缶に詰め、重さを量り糖液を入れて缶詰、殺菌する。
原料から仕上げ、壊れやすいこともあり、主に機械で作るチョコレートやお菓子のように簡単には出来ない。
現在、当社のシェアは全国の10%程度で、最大手で15%程度となっている。
そのみかんの生産量も、長く続いた価格の低迷や、農家の後継者不足で、最多時生産量360万トンが、今は100万トンの攻防。
ここまで減ると多少は価格も高くなってきたが、近年、農産物は天候異変でも苦しい経営を強いられるようになっている。
みかん缶詰を作るにも、その気象変化が大きく影響し、近年の温暖化や高温障害、寒波被害が品質に大きく影響する。
加えて、農家でも青果を高く販売するために、品種改良や栽培方法を変えているために、原料としての品質が変化し、歩留まり、つまり1缶を作るのに必要な原料量が20年前と比べると5割以上多く必要となった。
以前は、糖度も酸度も高い、味の濃いみかんが良い品質とされたが、現在の消費者が甘さを求め、酸っぱさに弱くなったために、甘いだけの食べやすいみかんが生産なされる。そのため、身の締りがなく加工するときに壊れやすくなる。
ただ、我々は、それを受け入れざるえなく、その時代時代に合わせて工夫努力するしかない。
残念なのは、そういう知識を持った、製造現場を理解する流通業界の人間がいなくなったことだ。